『お客さまには「うれしさ」を売りなさい』レビュー
『お客さまには「うれしさ」を売りなさい』レビュー。
お客さまには「うれしさ」を売りなさい 一生稼げる人になるマーケティング戦略入門
- 作者: 佐藤義典
- 出版社/メーカー: 青春出版社
- 発売日: 2018/02/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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読書の目的
美しいものはシンプルである
マーケティングについてあまり知識を持っていない。
そんな時に出会ったのが佐藤義典氏の戦略BASiCSの本であった。
戦略BASiCSの考え方はいたってシンプルで、マーケティングの4Pなどといった一般的な概念を、より一層使えるフレームワーク、使える考え方にリバイスされた内容である。
美しいものはシンプルである。
今でもマーケティングとは?、と聞かれると答えに窮することがある。
しかし、マーケティングが、この戦略BASiCSに収斂されるということは何となく理解している。
自分の強みと対する顧客、それを包括する競合が存在するフィールドについて考えを巡らすことで、ポジショニングを確立することとでも言うべきか。
強みと独自資産の違いについて、最初はなかなか理解できなかった。
「強み」は表面的に見える部分であり、顧客にとっての嬉しさ、バリューであることをであって、「独自資産」は強みを真似されないための具体的な違い、それを支える独自のノウハウという理解になる。
実際に使えるマーケティングの考え方
- マーケティングの基本となる部分を、佐藤氏の言葉で再度確認し、自分のベースとして定着させること
- 自分のビジネスにおいて、このマーケティングの考え方を整理して活用することで、組織全体の売り上げ向上を目指す
- ファンドレイジングの知識と相乗効果で、ベネフィットを提供しつつ、資金を調達し成功できる団体を増やせるようにする(第三者に伝える)
読書の目的としては、より一層マーケティング、戦略BASiCSについての理解を深めることをが挙げられる。
平易な言葉を用いて展開される本書は、結果的に理解の再整理に役に立ったし、新しい概念を手に入れることにもつながった。
この考え方は、どんなジャンルの分野においても展開することができるだろう。
そういった意味で、自分自身もこの考え方を体得することができれば、自分が関係する団体さんに貢献することができるはず。
また、ファンドレイジングという分野との相乗効果を見ることもできるだろう。
組織体制まで踏み込んで全体的な売り上げの向上や資金調達と言う意味合いを持つファンドレイジングであるが、具体的な戦略や戦術について、マーケティングの要素も当然ながら必要になってくる。
すぐに消えていく商品やサービス群の中にあって、長期的に強みを維持しながら売り上げを確保していくというマーケティングの考え方を、早く体得したいし使えるようになりたい。
企業にとって価値に感じてもらえる能力やノウハウを身に付けることは、自分の価値向上にもつながるし、自身を成長させてくれる一つのきっかけにもなるだろう。
感想、レビュー
- 戦略BASiCSについては、他の書籍において理解していたが、TPOについての検討が新鮮で使える概念であると感じた
- 平易な言葉で理解もしやすくサクッと読めた一冊であり、入門編として他人にも薦められる内容で、関係する団体さんにも紹介したいと思う
- 社内全体において、戦略BASiCSが普及することで社会全体がより住みやすく、嬉しさの溢れる世界になると感じた
TPO×戦略BASiCS
具体的なTPOに落とし込むことで、使い方や利用場面を詳細に描き出すことができ、そしてその時に選ばれる商品・サービスも考えられるようになる 52
著者の本は何冊か読んだことがあるが、TPOに応じて戦略BASiCSを組み立てると言うのは初めて出てきた考え方だ。
著者は繰り返し強調しているが、「価値は使い方にあらわれる」と言う部分をまさに体現した1つのフレームワークとも言える。
機能は単純な「機能」であり、それは強みではない。
「強み」があってこそ初めてお客様に嬉しさが伝わる。
「強み」はその強みを支える誰にも真似されない「独自資産」が必要である。
一方で、その「強み」は、相手に伝わらなければ意味がない。
論理的だが奥が深い。
マーケティングに関する、THE入門書
奥が深いがシンプルな考え方ではあるので、平易な言い回しも相まって、すっと入ってくる内容であった。
マーケティングの入門編としてはこれ以上ない書籍だと思う。
大学生時代に出会っていれば自分の考え方も変わったかもしれない。
高校生や大学生レベルからこの考え方を身に付けることができれば、マーケティングと言う素養を持った社会人が増えて、社会がより一層嬉しさの溢れる世界に変わるだろう。
言うは易く行うは難し
一方で、当然ながら難しい部分があるのは認識しておく必要がある。
強みと顧客を「行ったり来たり」して考えることで、より精緻な「顧客ターゲット」や「強み」が考えられるようになります。136
言うはやすし行うは難し。
自団体のことになると、急に考えられなくなることが往々にしてある。
ひとまず戦略BASiCSを作って、それが一貫性があるか、具体性があるか、という観点からチェックを行う。
一方でターゲットとなる設定が間違っている場合もあるし、強みと思っているものが強みではない、簡単に真似されてしまうものであることもよくある。
実際に戦略を立てるときは、戦略を立てるだけではなくてきちんとPDCAを回して、その理論自体が正しいのかどうか、もっともらしいかどうかと言う部分を確認しなければならない。
客観的な意見をもらえるコンサルタントが入るとより一層分かりやすく、違った角度からメスを入れてもらうことができるだろう。
自分自身も、戦略BASiCSを身に付けることができれば、コンサルティングに入った際に1つの武器として使うことができる。
売り手は売り手
「立場変われば人変わる」で、買い手にとって当たり前のことが、売り手になった瞬間にさっぱり分からなくなるものです。199
自分が欲しいサービスかどうか、商品かどうかについてはすぐに判断できる。
一方で自分が作る商品が、自分が狙うターゲットに対して響くかどうかという点については、根拠のない判断基準を持って決定されていることが多い。
よくわからないまま物事を決めてしまうこともあるだろうし、思い込みで進めてしまうこともあるだろう。
いずれにしても、自分が狙うターゲット層に対してのヒアリング等は実施すべきであるし、実施できない場合でも統計等の情報用いて議論の確からしさを担保するようにした方が良い。
まとめ
- スポーツビジネスに当てはめることによって、通常は見落とされがちなターゲットからメッセージまでの概念を再構築する詳細
- ファンドレイジング×戦略BASiCSの理論を整理し、自分の中での理解を深め、誰かしらに対して、伝えつつさらに理論を構築する
スポーツビジネスでの活用へ
結局のところ、自分が関わるスポーツやファンドレイジングの世界で本書の考え方を有効に活用しなければならない。
企業の経営に関して、分野は違えど考え方は同じ。
特殊な世界と思っていたら、特殊と思っていない人に対して負けてしまうだろう。
「自分が絞らなければ、絞ってきた競合に負ける」86
チケットを売って、スポンサーを集めるという営業にも、自団体のビジョンやミッションを明確にしてターゲットを定めて動かないといけない。
伝わり方は間違っていないか、一貫性はあるかなど、論理的な打ち手になっているかをきちんと検証すべきである。
自転車操業になりがちな地域プロクラブにおいて、丁寧に足元から固めて動くことは非常に重要だ。
非営利法人でのマーケティング
また、非営利団体のファンドレイジングをするにあたってもマーケティングは重要である。
誰に対して矢を放つのか、強みは明確か、伝わっているか。。
考えるポイントはたくさんあるが、社会課題の解決に向かうのは営利企業も似たようなもの。
私たちが何かを買って使うという時は、何らかの「課題」を解決したい時でもあるのです。その意味で、「うれしさ」と「課題解決」は同じことです。26
最初の購買のときに大事なのが「おいしそう」なことで、リピート購買のときに大事なのが「おいしい」ことです。「おいしい」だけでは、初回購買は起きない 180
非営利法人だから売り上げが作れないわけでもない。
構築するBASiCSに筋が通っていれば必然的に支援される可能性も高まる。
共感がキーポイントでもあるが、共感を生み出すにも適切な人に適切な紹介をしなければそもそも共感にも至らない。
戦略BASiCS、シンプルであるがやはり奥が深い。
学びはまだまだ続きそうだ。